ファミリーマートのおむすび売上が前年比120%を超える成長を記録した。
この急増の背景には、大谷翔平選手を起用した「おむすび二刀流、解禁。」キャンペーンと、人気店「ぼんご」とのコラボレーションという二つの大きな要因がある。
「おむすび二刀流、解禁。」キャンペーンの戦略
ファミリーマートは2025年3月4日から、全国約16,300店舗で「おむすび二刀流、解禁。」キャンペーンを展開した。このキャンペーンは「新作」と「名作」という二つの軸で構成されている。
- 新作:東京の人気おむすび専門店「ぼんご」監修の新商品
- 名作:定番の手巻おむすびを1.5倍のサイズにした「大きなおむすび」シリーズ
「二刀流」という言葉は、新商品と定番商品の両方に注力するという戦略を表しつつ、大谷翔平選手と合致している。
大谷翔平選手起用の効果
このキャンペーンの最大の特徴は、「ファミリーマートおむすびアンバサダー」として大谷翔平選手を起用した点。日本国内で圧倒的な人気と支持を誇る大谷選手の起用は、次のような効果をもたらした:
- テレビCM、店頭の大型幕、ポスター、デジタル広告、SNSキャンペーンなど、多角的な露出による高い認知度
- 「セレブ・ハロー効果」による商品の信頼感や好感度の向上
- 大谷選手の「二刀流」イメージをキャンペーン名に直接結びつけることで、新作と名作という二つの戦略を効果的に訴求
「ぼんご」とのコラボレーション効果
もう一つの大きな成功要因は、東京・大塚に店を構える人気おむすび専門店「ぼんご」とのコラボレーションだ。創業60年以上の「ぼんご」は、平日でも開店前から行列ができる人気店で、「握らない」製法と50種類以上の豊富な具材が特徴となっている。
このコラボで開発された商品は2種類:
- 「手巻 肉そぼろ(卵黄ソース)」(税込198円):「ぼんご」でも人気の「卵黄×肉そぼろ」をイメージした商品。牛と豚の挽き肉を使用した甘辛い肉そぼろと、とろっとした食感の卵黄ソースが特徴。
- 「手巻 高菜明太マヨネーズ」(税込198円):ごま油の風味とピリッとした辛さの高菜炒めと、魚介や和風だしの旨味を効かせた明太子マヨネーズの組み合わせ。
「ぼんご」の店主である右近由美子氏も、このコラボ商品の再現度の高さを評価。この専門家からの保証が、商品の信頼性を高めた。
「ぼんご」のような高い評価を持つブランドとの提携は、ファミリーマートのおむすび全体の品質イメージ向上に寄与し、「ぼんご」の味を並ばずに手軽に試せるという点が多くの消費者にとって魅力となった。
サイズアップによる定番商品の強化
キャンペーンではコラボ商品だけでなく、定番商品を1.5倍にサイズアップした「大きなおむすび」シリーズも展開:
- 「大きなおむすび 昆布とツナマヨネーズ」(税込258円):2種類のサイズの昆布を使用し、マグロとカツオを配合したツナマヨネーズで食べ応えを追求
- 「大きなおむすび マヨたま」(税込285円、3月11日発売):鶏ガラの旨味とペッパーを効かせた醤油ご飯に、半熟煮卵とタルタルソースを組み合わせた新商品
驚異的な販売実績と地域差
ファミリーマートの発表によると、キャンペーンで発売された3商品(「手巻 肉そぼろ(卵黄ソース)」「手巻 高菜明太マヨネーズ」「大きなおむすび 昆布とツナマヨネーズ」)は、発売からわずか1週間で累計販売数が300万個を突破。キャンペーン開始後のおむすびの店舗当たりの売上は、前年比120%を超えた。
興味深いことに、「大きなおむすび」シリーズは全国的に均等に売れている一方、「ぼんご」監修のおむすびは、特に「ぼんご」の店舗がある東京を中心とした関東地方で好調だった。これは、地域ごとのブランド認知度が販売に影響することを示している。
品質向上への継続的な取り組み
今回の売上増加は一過性のキャンペーン効果だけではなく、ファミリーマートが継続的に行ってきた品質向上への取り組みも大きく貢献している:
- おむすびの米を「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」を最適な比率でブレンドし、炊飯工程を見直すことで米の甘みを引き出す工夫
- 「瀬戸内の藻塩」の旨味や味わいを向上させ、塩の振り加減を均一にするための新しい塩振り機の導入
- 2023年に「ぼんご」のおむすびを参考に開発した手巻おむすび成型機の導入。米とお米の間に空気を含ませることでふっくらとした食感を実現
さらに販売促進策として、おむすび全品に使える20円引きクーポンや、「ちょいデリ」とのセット購入で50円引きとなるキャンペーン、「ぼんご」の店主と行く親子田植えツアーへの招待企画なども実施し、消費者の関心を高めている。
今後の展望
ファミリーマートは今後も「大きなおむすび」の新商品を4月下旬に展開する予定で、その後も定期的に新商品を発売していく方針。4月には新たな「ごちむすび」シリーズの発売も予定されており、おむすびカテゴリーへの注力を継続する姿勢が見られる。
今回の成功を持続的なものにするためには、大谷翔平選手との継続的な連携、新たな人気店とのコラボレーション検討、品質向上への投資継続、そして地域特性に合わせたマーケティング戦略の強化が有効だろう。
ファミリーマートのおむすび売上120%超えという驚異的な成果は、大谷翔平選手の強力な広告効果と「ぼんご」との戦略的なコラボレーション、そして継続的な品質向上の取り組みが複合的に作用した結果といえる。この事例は、効果的なマーケティング戦略と本質的な商品価値の向上の重要性を改めて示している。